英語版E-200の発表からはや5ヶ月。 ひと月の発売延期を経て、ついにCASSIOPEIA Eシリーズの最新機種E-2000が発売されました。
本機の登場を心待ちにしていたひとも多いのではないでしょうか。
とはいえ,話題の新CPU「PXA250(XScaleはアーキテクチャ名)」を搭載した富士通の新機種「Pocket LOOX」が発表された今となっては,ARM搭載マシンであるE-2000の魅力も霞んでみえているかも知れません。
私自身はhp jornada 568の液晶を破損し,購入しなおしたこともあり,予算的にE-2000を入手することは出来なくなってしまいました。
しかしながら,2002年3月30日発売のPocket PC専門誌「Pocket PC Fan」の原稿執筆の関係で同機に触れる機会を持てたこともあり,愛着あるCASSIOPEIAシリーズとPocket PCの援護射撃をすべく,簡単なインプレ記事を書いてみたいと思います。
ただし,あくまで仕事の一環としてお借りしていたわけですから,雑誌(ムックですけど)記事の存在を無視して,モロに被った内容を好き勝手書くというのも問題でしょう(^^;
ですから,今回に関しては写真や画面キャプチャなどは抜きで,文章の方もさらりと流す感じで本機の特徴を概観していく予定です。
例によって各マシンのカタログデータは↓こちらのオフィシャルサイトのスペック表を参考にどうぞ。
まずは,例によってE-2000をハードウェアの面からみてみましょう。
本機の長所ですが,この辺りはPocket PC Fanの記事中で触れている箇所が大半ですから,出だしから簡単に書いていくことになります(^^;
ついに反射型液晶が採用されました。
E-500以来美しい透過型液晶がCASSIOPEIAシリーズの売りでもあっただけに,残念に感じるひともいるかもしれません。
が,心配は無用です。 発色は極めて自然で白がちゃんと白くみえます。
# 大抵の反射液晶は青みがかった白。
やや色が薄い印象がありますが,反射型では間違いなくトップクラスの液晶だといってよいでしょう。
輝度も十分確保されています。
ただし,3.5inchと小型化されてしまった点は非常に残念ですね。
それとバックライトを消した状態だと,反射型としては暗めの部類に入るかもしれません(^^;
SDとCFの2スロットを搭載しています。
CF側はダミーカード。
SD側はボディ側面にありこちらは蓋付きでSD IOには非対応です。
SDメモリカードにムービーデータなどを入れてちょっと使ってみた限りでは,読み込み速度は実用上支障なさそうな印象でした。
SDスロットの蓋はわりと作りがチャチな感じですので,頻繁にSDカードを交換するというよりは,ストレージ用途として挿しっぱなしにして利用する形になりそうですね。
別売りですが,PCカードユニットによってPCMCIAスロットを増設することが出来ます。
jornada 568などと違いCFスロットと排他ではありませんから,3スロット利用できるようになるのは便利でしょう。
PocktGearのようにPCカードスロットが逆差しでカード外部のエクステンション部分の干渉を防ぐといった工夫はないようですが,PocktGearはCFスロットの蓋が外れず結果干渉する可能性があるので,大差ないような気も無きにしも非ずといったところでしょうか。
# ↑実際に試したわけではないので,断言しかねますが(^^;
USBホスト機能を備えているので,『ドライバさえあれば』各種USB機器を接続することが可能です。
本体にはUSBポートはないので,クレードル,USB接続アダプタ,PCカードユニットのいずれかを利用する必要があります。
私が試した範囲では,キーボードは英語配列になり,一部アプリでEnterキー押下でウィンドウがクローズしてしまう,日本語入力には標準のSIPを利用するため入力モード切り換えには画面タップ必須。 かな入力不可などの問題はありましたが,一応利用可能でした。
職場などでちょっと文字入力をしたいという時には,威力を発揮しそうです。
ちなみにゲームパッドはドライバが別途必要な模様です。
# ただ挿しただけでは動きませんでした。
hp jornada 568と同様にバッテリ交換が可能になっているのはポイントが高いですね。
ただし,バッテリ容量は950mAhとやや少なめです。
# 私が試した限りではヘッドフォン再生の画面消去時で7時間半程度。 hp jornada 568の11時間超には大きく水を空けられていますが,バッテリ容量の割に優秀な方でしょう。
急速充電器などは用意されていませんが,PCカードユニット側のバッテリにも同じものが使用されており,取り外しおよび単体充電可能なので,PCカードユニットとACアダプタの組み合わせを充電器代わりに利用することができる点は大きなアドバンテージですね。
PocketGear以外のPocket PC 2002搭載機種は軒並み64MB搭載となっていますが,一応あげておきます。
個人的には32MBでもやり繰りできなくもないと思いますが,多ければそれだけ楽ができるのも確かですし(^^;
# まぁ,無駄にメモリを積むと電源OFF(厳密にはサスペンド)時の消費電力もあがってバッテリのもちに影響がでるのかもしれませんが。
ベンチマークなどには興味がないので,実測値ではなく体感上の話しですが,PIMソフトなどの動作はhp jornada 568などより優速に感じられます。
ただ,「えここdeふぁいと!」や「PalmGB」などでは目に見えてフレームレートが落ち込んでいたのは少々気になるところです。
# 私が触ったのは出荷前の貸し出し機ですから,製品版では改善されている可能性もあります。
同時期に発売されたPocketGear同様,Pocket PC 2002のSP1にあたる(と思う)不具合の修正パッチがはじめから適用済みになっています。
具体的には手書き入力での『ふ』の誤認識問題。 DNSの反転問題などが修正されているようです。
ただし,一部のSIP(入力パッド)が展開できなくなったり,リストア時に受信トレイのアカウント情報が正常に復元されない(詳しくは後述)不具合などは依然残されたままになっています。
雑誌記事に配慮して箇条書き風で簡単に(^^;
操作感は従来通り良好です。
やはり片手での操作を考えた場合この手のボタンは必須といえましょう。
microdriveなど,動作中に電源を切断するとクリティカルなトラブルが発生する危険性が高いデバイスを利用するには便利ですね。
というか,仮にも『PC』を標榜するならこれくらいついていて欲しいものです(^^;
SDメモリカードの認識名が『メモリカード 1』などの連番表記ではなくSDカード固有のものになっているため,カードを挿入した(認識された)順番によってCFと入れ代わってしまい,プログラムショートカットが無効になるといったトラブルが発生しなくなっています。
レジストリ操作で回避できる現象とはいえ,メーカ側で対応してくれたのはありがたいところといえましょう。
# SD カードだったかSD メモリ カードだったかは失念しました(^^;
2〜3万で買えるデバイスならともかく,この価格帯のマシンならこういった点をケチって欲しくないものです。
ちなみに,PocketGearも充電完了時は消灯ではなく,点灯色が変わるようですね。
インナーイヤータイプでは聞き取れない程度に抑えられています。
ヘッドフォンや外部スピーカで音楽を快適に楽しめるのは,ありがたいところでしょう。
ただし連続入力はできません。
ある方向から別の方向にキーを入れ直す場合は,指を一端ボタンから放してニュートラルを経由させる必要があります。
がボタン自体は大きさの割に操作しやすいので,格闘ゲームのコマンド入力でも要求されない限りは慣れで克服できるレベルの問題かもしれません。
ただし,ボタン表面の突起が指に当たって痛いのは減点対象ですねぇ。
買い直す必要がないのは既存ユーザにはありがたいところ…ですが,裏を返すと品質が改善されていないという見方も成り立ちますね(^^;
Eシリーズの伝統に則って,アクションボタンと各アプリケーションボタンの同時押しにもソフトを割り付けることができるようになっています。
つまりアプリケーションボタンに8本のソフトを割り付け可能なわけです。
こちらもEシリーズ伝統の操作方法ですが,アクションボタンとカーソルボタンの同時押しでフロントライトの輝度調節が可能です。
輝度センサなどを搭載していない本機にとっては,ありがたい機能といえましょう。
コネクタの強度面も今回は大丈夫という話ですが,果たして?
E-500,E-507,E-503はリセット時に未来チック(笑)な起動画面が表示されるのが特徴でしたが,これが復活しました。
一見するとE-503のものに似ている(同じ?)ような気がしますね。
個人的にはポイント高いです(笑)
以下残念な点。 こちらも箇条書き風で(^^;;;
Pocket PC 2002搭載機は全体的に小型化が進んでいる上,本機は液晶が小さいため相対的に大柄にみえます。
# 実際PocketGearより横幅が大きい。
E-700とほぼ同サイズですが,角張っている分本機の方が握りにくい印象あり。
液晶部が保護のため,液晶面がくぼんでいるのも悪印象を与えているかもしれません(^^;)
l'agenda BE-500では実現されていただけに残念ですね。
ついでにE-700から付いた滑り止めのビニールパーツもなくなりました…
上記のボディ断面からくる握りにくさと合わせて,非常に残念な点といえましょう。
ただし,将来的な対応は期待できる『かも』しれません。
CASIOの頑張りに期待ですね。
PCカードユニットやUSBホスト機能のサポートもあるので仕方ありませんが,シリアルコネクタの形状が変更になってしまったため,従来の携帯電話接続ケーブル類は全て流用できなくなってしまいました。
加えて,ケーブル類の価格設定がかなり高く(12,000円)なっているのが気になるところです。
まぁ,国内メーカだけあって,携帯電話のケーブル接続に対応してくれているだけありがたいという説もありますが(^^;
ボタン配列がゲームマシンライクな配列から,iPAQなどと同じくカーソルがセンターに配置された配列に変更になりました。
ゲーム愛好家には残念な仕様変更といえましょう。
また,本体左サイドにあったボイスレコーダボタンが本体前面に移動になっています。
そのため,ボイスレコーダボタンにスタートメニューやランチャ,Escなどを割り当てていたひとは少々不便を強いられることになりますね。
# 一応(左手で本体を握っている時に)小指で一番右端のボタンを押したりすることはできますが,手が小さいひとは厳しそうです(^^;
ちなみに,E-2000のカーソルボタンはスピーカを内蔵していますが,決定機能(アクションボタン)はもっていません。
カーソルボタンと内蔵スピーカが一体となってしまったため,スピーカの音質が明らかに低下しています。
まぁ,iPAQよりは良いといった感じでしょうか(^^;
本体の薄型化の影響下もしれませんが,ヘッドフォン端子が本体左側面(の上部)にあるため,ポケットに入れるさいなどに少々邪魔になります。
E-700の筐体では改善されていただけに残念です。
電源端子も本体左側面(こちらは下部)にあるため,本体にACアダプタを接続した場合,やや邪魔に感じられます。
ワールドワイド対応になりましたが,ケーブルの真ん中にユニットがあるタイプでやや大柄になりました。 旧jornada系やCLIE TシリーズのACアダプタみたいな感じです。
余談ですが,クレードルの角度は従来機種と同様なので,クレードルに挿したまま操作するにはあまり適していない角度といえましょう。
また重量も軽いので画面などをタップすると動きやすいですね。
ケーブルが生えているので倒れはしないはずです(^^;
続いてソフトウェア関連。
従来からの変更点が少ないので,簡単にいかせてもらいます。
詳しくは,E-700やE-750(かPocket PC Fanの(^^;)のインプレ記事を参考にしてください。
E-500のころから(メーカインタビューなどで)搭載したいといっていたタスクマネージャ「MenuBar」がついに搭載になりました。
ナビゲーションバー(タイトルバー)上に常駐するタイプで,アイコンタップでメニューがポップアップします。
タスクの切り換え,終了以外にバッテリおよびメモリステータスの表示も可能。
なのはいいんですが,再起動するたびに設定(PCでいうところのコントロールパネル)から再常駐させる必要があり面倒な上,アイコンのバックグラウンドカラーが透過色ではなく青いのでTodayテーマを変更すると悲惨なことに…(汗)
Pocket PC 2002になってOSのサイズが増えたせいか,前述のMenuBarと定番の全画面型ランチャソフト「Menu」(ほぼ従来通りで改良はナシ)以外の全てのソフトがCD ROMからのインストールになってしまいました。
メインメモリが64MBに増えたので致命的ではないでしょうが…むぅ(苦笑)
統合辞書が国語,英和,和英のみとなりました。
個人的には非常に残念ですねぇ。
WindowsMediaPlayerが動画対応の8になったことで,CASIOの独自形式動画再生ソフト「モバイルビデオプレイヤー」がなくなりました。
順当な判断ということで,実害はあまりないでしょう。
ちなみに,電子手帳(というかシステム手帳)ライクなインターフェースがウリのモバイル住所録とモバイルスケジュールは健在ですよ(笑)
モバイルビデオプレイヤーが削除された関係か静止画(画像)表示ソフトがCASIOの独自ソフトからIA Albumの日本語版に変更になりました。
画面キャプチャやスライドショー機能など機能も豊富な上,比較的使いやすいソフトなので,E-2000ユーザ以外にもお薦めかもしれません。
# Vis-a-vis Handango辺りで日本語版を販売していた記憶があります。
その他にもPowerPoint文書が無変換で利用可能な「ClearVue Presentation」。
hp jornada 568などにもバンドルされていた翻訳ソフトの「TransLand/EJ・JE」などもバンドルされています。
ちなみに,JRトラベルナビゲータも健在です。
CF上にバックアップをとるためのバックアップソフトが削除されました。
非常に残念ですが,それなりの理由があるとのこと(当たり前ですな(笑))ですので,今後の対応に期待ということにしておきたいと思います(^^;;;
したがって,本機でバックアップを取るには,ActiveSync経由によるバックアップを利用する必要があります。
USBだと転送速度がE-750より向上(iPAQと同等程度?)しているとはいえ,結構時間がかかりますから,バックアップにはLAN接続がお薦めです。
なお,Pocket PC 2002はバックアップファイルをリストアすると受信トレイのアカウント設定が正常にリストアされないという不具合※がありますが,本機にはこれを回避するための「CASIO 受信トレイ修復ツール」がバンドルされています(^^;
※ レストアすると受信メールが各アカウントのフォルダではなく,ActiveSyncの受信トレイに保存されてしまう現象。 アカウントを削除後作成しなおすことで復旧可能。
他機種の場合,パワーマネジメントの設定項目がいろいろと拡張されているのですが,本機のソレはE-55時代から変わらず,バッテリ駆動時とAC駆動時の自動電源OFFタイムアウト値くらいしか設定できません(苦笑)
さらに,フロントライトが5段階…しかも1つは消灯なので実質4段階にしかコントロールできません(汗)
ハードウェアの性能面ではトップクラスなだけに,この辺りの作り込みの甘さは非常に残念といえましょう。
# まぁ,実は(IBMのごとく)デフォルト状態で十分な省電力設計がなされているという自信の現れなのかもしれませんが(^^;
さて,簡易インプレッションということで,いままでになくあっさりとまとめてみましたが,最後に本機の全体的な印象を書いて本記事の締めくくりとしたいと思います。
CASSIOPEIA E-2000は老舗のCASIOが作成しただけあって,ハードウェア的には非常に優れたマシンに仕上がっているといっていいのではないでしょうか。
2スロット搭載やオプションによる3スロット搭載。 本体メモリ64MBといったカタログスペックの面でも競合製品に劣っていないことはもちろん,交換可能なバッテリや液晶,音楽再生品質,アクションコントロールなどの操作感といった数値に現れない箇所もトップクラスの性能をもっている点は特筆に値します
が,他社製品がFlash ROMの余剰領域をユーザの保存領域として開放したり,プリインストールの搭載に活用しているのに対し,本機では有効に利用されているとはいいがたいものがあります。
また,出先での万が一のトラブルを考慮した場合,バックアップソフトが搭載されていないというのは(動作が安定しフルリセットの危険性が低下した今日においても)不安にならざるを得ません。
ソフトウェア編の最後で触れたパワーマネジメント系の作り込みの甘さも含め,ソフトウェア面での対応がやや弱いという印象を受けました。
とはいうものの,後発のPocket LOOXにはCPUスペックでこそ劣りますが,目立った欠点もなく,個々の性能も素晴らしいものをもっている本機は,遅めの登場ながらもこれからの夏のボーナス商戦を十分戦えるだけのポテンシャルを持ったマシンだと思います。
せっかくこれだけ素晴らしいハードウェアを開発することができるわけですから,CASIOにはここで満足することなくさらなる努力を期待したいところですね。
# l'agenda搭載の独自フォントのPocket PCへの搭載とか(笑)
# 色々と苦言も書いていますが,Pocket PCを使い慣れたユーザさんには(素体として)安心してお薦めできるマシンではないかなと(^^;