Pocket PCとPalmOS搭載機を併用,あるいは乗り換える際に障害となる問題のうち比較的深刻なのが,文字入力方式の違い…つまり,Pocket PCではGraffitiが利用できないという問題でしょう。
英語版Pocket PCでは公に謳われてはいないものの,Graffitiが利用できる(らしい※)のですが,日本語版ではなぜか削られてしまっています。
※ 英語版をちゃんと使ったことがないので,伝聞です(^^;
Palmユーザからの乗り換え需要を喚起する意味でも,有効な手段となりうるはずのGraffiti対応が日本語版では見送られているという事実はとても残念なことです。
本ページでは日本語版のPocket PC上でGraffiti(のようなもの(^^;)を利用することを可能にしてくれる,SIP『MyScript』(シェアウェア,€44.95)について解説していきます。
参考リンクいきなり大仰な前置きから入ったわけですが,実際にはこの『MyScript』というソフトは,(少なくともPocket PCユーザの間では)そこそこ有名なソフトで,TEEVさんのサイトの「PocketPC ソフトウェア入力パネル レビュー & リンク集 」でも紹介されているので,既にご存じの方も多いことでしょう。
私自身は実際にCLIE PEG-N600Cを購入するまでは,Graffitiに対して懐疑的だったこともあり,本サイトでことさら取り上げることもなかったのですが,実際に利用するに及んでGraffitiの使いやすさを実感したため,ようやく重い腰を上げる気になった次第です(^^;
さて,本サイトはPocket PCおよびWindowsCE活用サイトですから,ユーザの中にはGraffitiが何かということは知っていても,実際どの辺りがメリットになるのかといった点は分からない方もいらっしゃるかもしれません。
が,Graffiti利用による日本語入力の素晴らしさを語ることが本記事の主題ではありませんから,私の独断と偏見で簡単に結論づけてしまうと,Graffitiによる日本語入力のメリットはおおむね以下の4点に絞られると思います。
1に関しては説明するまでもないでしょう。
Graffitiはアルファベットを簡略化した特殊な文字を利用するため,各文字の判別が容易になっており,誤認識が起きづらくなっています。
誤認識が少なければ,入力も快適になるのは自明のことですね。
# 厳密にいうとアルファベット入力領域と数字入力領域が分けられていることも重要ですが,ここでは割愛します(^^;
次に2ですが,これは上記の通り,Graffitiはアルファベットを簡略化した文字のため,Xを除く全ての文字は1ストローク(1画)で入力することが可能となっています。
このため,ロマカナを利用する日本語入力においても,1文字当たりおおむね2ストローク(2画)で入力でき,素早い入力が可能になるわけです。
3番に関してですが,これはCE機でもPalm-Size PC時代には限定的ながら利用できたのですが,SIP(入力ソフト)上で,左から右に横線を引くことでSpaceを入力したり,反対に右から左に線を引くことでBackSpace入力したりといったことができることを指しています。
他にも左右カーソル,Enter動作なども可能なため,いちいち変換ボタンや左右カーソルボタンに触れることなく,手書き文字認識と各種変換動作をシームレスに行うことができるわけです。
4は直接Graffitiと関係しているわけではないかもしれませんが,PalmOS搭載機ではアルファベット入力領域が1マスしか設けられていないため,ペン先の移動が最小で済み,いちいち手元(や画面)を見なくても入力できるという意味です。
# まぁ,これを長所と見るか短所として見るかは意見が分かれることろかもしれませんが(^^;
これから紹介する『MyScript』を利用した似非Graffiti入力を利用することで,Pocket PC上でも上記1〜3を(限定的ではあるものの)再現することができるようになります。
# =4は無理(苦笑)
MyScriptはもともとアルファベット(元はフランス語版のような気もしますが(^^;)による手書き認識入力を行うためのSIPです。
しかし,少しでも認識精度を向上させるために,アルファベット各文字に対して書き順(と文字形状)を登録する機能が搭載されています。
この書き順登録がかなり自由度が高いものとなっていて,ここでGraffiti文字を登録することでGraffitiが利用できるようになるわけですね。
通常のSIPと同様,設定→入力などからオプションにアクセスし,Profilesタブから新規登録(New)することで本設定が可能となっています。
画面キャプチャを見てもらえれば分かる通り,登録作業は非常に簡単です。
各文字ごとに4マスずつ手書きでGraffitiのサンプルを入力するだけなので,操作に迷うといったこともないでしょう。
アルファベット以外にも,数字や記号の一部,およびEnter(のジェスチャ)を登録する必要があります。
MyScriptではアルファベット入力領域と数字入力領域が分かれていないため,誤認識の原因になりそうな文字は若干のアレンジを加えて登録するした方が効率的でしょう。
# たとえばゼロは丸を書いたあとにスラッシュを入れるなど。
余談ですが,同オプションのGeneralタブにある「Delay before clearing the IM」はレスポンスを最重要視したいなら,最も左…つまりはShort側に設定してやればよいと思います。
次に実際の文字入力方法ですが,MyScript自体は通常のSIPと同様文字入力パネルの切り換えによって有効にすることができます。
通常のSIP同様画面下3分の1程度が文字認識領域になりますが,標準の「手書き入力」と異なり入力ボックスは存在しないため,紙に文字を書くような感覚で認識領域全体を利用して書いていくことになります。
ただし,本ソフトはもともと英語用に作られていますから,そのままでは日本語入力することはできません。
少々面倒ですが,文字入力モードを変更するには,標準のSIP「ローマ字/かな」を利用して切り換える必要があります。
# つまり,「ローマ字/かな」で入力モードを切り換えた後,「MyScript」を選択する必要がある。 逆もまた然り。
なお,ジェスチャに関しては,EnterとSpace(変換に利用可能),BackSpaceは利用できますが,左右カーソルなどは利用できないようです(^^;
ここまでMyScriptによるGraffiti入力を簡単に説明してきたわけですが,本物のGraffiti入力と比較した場合いくつかの制限事項があります。
主だったものとしては…
といったものがあげられます。
まずアルファベットと数字の入力ボックスが分かれていない件ですが,これに関しては先にも書いた通り,誤認識を防止するためにGraffitiに若干のアレンジを加える必要がありそうです。
入力頻度からいって,数字側を変更するのがベターかもしれません。
また誤認識も通常の手書き認識にくらべれば良好ですが,本物にはやや劣るといった印象があります。
2番目のモード切り換えに関しては前述の通りです。
不便ではありますが,もともと日本語入力を考慮したものではありませんから,妥協するしかないでしょう。
ジェスチャに関しても素直にあきらめるしかないでしょうね(^^;
幸い最も利用頻度が高いEnter,Space,BackSpaceは利用できますし,一応左右カーソルもソフトウェアボタンが用意されていますから,致命的な問題ではないでしょう。
むしろ問題は4の2ストローク入力(つまりは記号入力)に対応していないことでしょうか。
特にSpaceとのジェスチャとの絡みがあるので仕方がないところですが,手書きで長音『ー』を入力する方法がないのが痛いところです。
一応記号入力専門のソフトウェアキーボードがついていますので,これを利用するという手はあります。
頻繁に長音を利用するようであれば,DicToolを利用して単語登録してしまった方が早いかもしれません。
上記のようにいくつかの制限事項はあるものの,どれも(かろうじて(^^;)妥協あるいは対応できる問題ばかりですので,慣れ次第では十分速記用途にも利用することが可能だと思います。
しかし価格が比較的高めなことを考慮すると,人に気楽に勧められる性質のソフトではないことも確かです。
本ソフトは10日間の試用期間が設けられていますので,この期間を利用して使い倒してみるとよいでしょう。
# 現在Palmを使っているけど,Pocket PCも使ってみたい人はどうするのかという問題が残りますが(苦笑)
何にせよ,Pocket PCでGraffitiを使ってみたいと思っている人が『試す価値』は十分にあるソフトですので,本記事を読んで興味を持たれた方はぜひ試用してみることをお勧めします。
# 私自身はレジストしようと思っていたら,Decuma Japaneseが登場してしまったので,あっさり乗り換えてしまいましたが(汗)
# インストール時にルートフォルダに勝手にフォルダを作成しない仕様になってれば,結果も違っていたのですけど(苦笑)