Piel Frama社製のjornada 568専用ケースのレビューを書いて約1年がたちました。
そんなわけで,季節はもうすぐ春。
ベルトクリップ付きケースの季節です(謎)
このページでは「こまもの本舗」で販売されている,Piel Frama社製 iPAQ H3850 / H3870専用ケースを「本体のみ専用」「本体+CFジャケット専用タイプ」「本体+PCカードジャケット専用タイプ」の3つまとめて紹介します。
(記事公開日:2003/03/01)
参考リンク
春になると重たいコートとおさらばできるのは嬉しいのですが,ポケットの大幅な減少に加え,服装が薄手になってポケットの膨らみが目立ちやすくなり,PDAの収納場所の確保を考えるとなかなかに悩ましいものがあります。
# Pocket PCの場合,胸ポケットに入れるには躊躇われる大きさのマシンが多いのも困りものです。iPAQならh1910辺りがいい感じですが,日本語版の登場は未定ですし。
iPAQなら純正オプションの「IPP カバーパック」や「IPP CF拡張パック・プラス」共に液晶カバーがついていますから,そのまま鞄に放り込んでしまえばそれで事足りるという話もありますが,私の場合ショルダーバックではなくナップサック(タイプのPCバックなど)を利用することが多いため,鞄に入れてしまうと『ちょっとした用事では取り出すのが面倒になってしまう』という本末転倒なことになりかねません。
そこで(この時期になると)欲しくなってくるのが,ベルトクリップ付きケースというわけです。
# もっとも背広などを着る場合,腰回りが型崩れしてしまうのが難点ではありますが(^^;
しかし,いざ探す段になって困り果ててしまいました。
H3600シリーズの頃は海外製も含めてさまざまなケースが国内通販で入手可能だったのですが,日本で予想外に売れなかった(と思われる)反動か,H3800シリーズ用※のケース自体滅多にみかけないものになってしまっていたのです。
※ H3800シリーズとH3900シリーズは筐体が共通なので後者でも流用可能。
私がざっと調べた範囲で(見落としも十分ありえますが)扱っているのは「エクストリームリミット」「pocketgames」「こまもの本舗」「Vis-a-Vis」ぐらい(敬称略)。
# ケース類を豊富に扱っていた秋葉館のPDA撤退が痛いところ。
さらに革製のベルトクリップモデル(ホルスターは除く)となると,エクストリームリミットとこまもの本舗のほぼ2択に絞られてしまいます。
この内エクストリームリミットの方はCFジャケット専用タイプしかないので,各種バリエーションモデルが欲しいとなると事実上選択肢はないことに…
と,こう書くとまるで選択肢がなくて選んだかのようにもとれますが,私自身jornada 568専用(以下j568用)を1年間酷使してきたという実績(?)もあり,「これを選べば問題ないことは分かっていたので,あえて別の選択肢を探してみたらみつからなかった」というのが実際のところだったり。
そんなわけで,本項ではこまもの本舗(さん)からお借りした,「本体のみ専用(以下,本体専用)」「本体+CFジャケット専用タイプ(同CFジャケット専用)」「本体+PCカードジャケット専用タイプ(同PCジャケット専用)」の3タイプのケースを,手持ちのVajaブランドのケース(885s ベルトクリップ無しのCFジャケット専用モデル)との比較を交えつつ紹介していきたいと思います。
なお今回お借りしたケースの内,CFジャケット専用とPCカードジャケット専用の2つに関しては,先行サンプル品のため多少フィット感に問題があるものだそうです。
j568用ケースのレビュー記事にも書きましたが,「Piel Frama社」は革製品で有名なスペインの企業で,1984年に携帯電話の革製カバーを製造するために設立された老舗メーカーです。
# と,こまもの本舗の紹介ページに載ってます(^^;
本牛革を利用し,ポケットの内部などの裏地には革の剛性を高めるために引っ張り強度の高い合成繊維を使用し,ドイツの繊維メーカー「Gutermann社」製の100%ポリエステル糸を使って縫製しているのが特徴…らしいです。
# と,こまもの本舗の(以下略)
私は革製品の善し悪しが分かる人間ではないので細かいことは分かりませんが,逆説的に私からみても安価な製品との違いが分かる程度には柔らかくて肌触りのよい革が使われていますし,縫製もしっかりとしていてj568用を1年弱酷使しても目立ったほつれなどは全くおきませんでしたから,しっかりした作りであることは間違いないのではないかと思います。
また製品の品質と並んで,豊富なラインナップも同社製ケースの魅力でしょう。
たとえばPocket PCならGENIO e 550GからPocketGearまで,国内で販売されているPDAの大半をフォローするラインナップは特筆に値します。
専用ケースが見つからない時は,(国内販売の場合)同社製ケースかエクストリームリミットのボディースーツを探せば,発売されたばかりの新製品(か業務用モデルなど)でもないかぎりはケースが入手できるのはありがたいかぎりです。
また,全てのモデルにベルトクリップが標準装備されている点も特徴となっています。
# と,こう書くとある意味デメリットともとれますが,心配は無用です(後述)。
iPAQ用のケースとしては非常にオーソドックスな形状になっており,パーツ構成などはiPAQ用ケースの(少なくとも海外での)定番Vajaのものと非常に似通っています。
基本的な構造は本体専用,CFジャケット専用,PCジャケット専用とも共通となっており,違いは(iPAQ側のサイズ変化に伴う)サイズの違いのみです。
# 本体専用はそこそこの大きさですが,CFジャケット専用となるとかなりのボリュームになります。PCジャケット専用は当然最大サイズですが,逆に印象としてはCFジャケット専用と大差ない感じでしょうか。
ボディ背面とフリップカバーが1枚板(革)になっており,そこに本体を前から包み込む形で1枚構成のパーツが縫い付けられる構造です。
この本体を包む部分は裏がスエード状になっており,本体に不要な傷を付けないよう配慮がされています。
# Piel Frama,Vaja共に縫製部の糸が本体に当たるのが問題といえば問題ですが,iPAQはメッキ加工されているので塗装ハゲの心配は薄そうです。
また本体前面部分,液晶を取り囲むフレームとなる部分は3重構造になっているらしく,芯が入っているため液晶周囲が不格好にゆがむことはありません。
縫製もしっかりしており,Vajaのものは裁断(後の目処め)のみで済ましている「充電/通信ポート」周りもしっかりと縫製することで強度を高めているらしいところは好印象です。
本体裏からフリップに続く部分は内側に補強板に加えスポンジ素材が入れられており本体保護に一役買っているのはVajaのものと同様ですが,全体的に使用されている革が厚くきめの細かいものになっていて贅沢な作りとなっています。
# ただし,フリップ固定時のケース上面(イヤフォン穴のある部分)には(Vajaのものと違って)スポンジが入っていません。
サイズ的にはタイトな作りのVajaと異なりかなり余裕をみた作りになっているようで,CFジャケット専用の場合,通常のCFジャケットだけでなく,CF拡張パック・プラス,CF拡張パック・プラス&スリムバッテリ,OMRON製iPAQ用モデムジャケット,MemPlug
Dual-CF Expansion Packなども余裕で入れることができました。
# 現在はまだ先行サンプル品でのチェックのみなので注意。
Vajaのケースでは入るには入るがケース自体を痛める覚悟をする必要があったのに比べると,拡張パック・プラスの切欠き部分が挿入時に引っかからないように注意する程度で十分通常利用できそうな雰囲気ですから,これらのジャケットを利用しているひとにとっては有力な選択肢になってくれそうです。
# 特にCF拡張パック・プラス&スリムバッテリ辺りだと,Vajaの場合入れる時に破滅の音が…(^^; <一応どれも入りましたが
なお,こまもの本舗ではこれらのジャケットでの検証を行っていらっしゃらないため正式には未対応とのことですが,この機会に私の手持ちジャケットを利用して製品版で確認をとっていただこうと考えていますので,結果が分かり次第ここに追記できればと思います。
# というか,こまもの本舗のページでなんらかのアナウンスがあることに期待したいところですね(笑)
まず,フリップの固定部(クロージャー)ですが本体前面下部から裏面に回り込むベルトをホックでとめるタイプになっています。
ベルクロ(マジックテープ)と違って外すときにベリベリと大きな音がしませんので,取り出すときに周囲に不要な気をつかわずにすむ点はありがたいところです。
iPAQの各種インターフェースへのアクセスに関しては,本体上部(フリップ部分)の「ヘッドフォン端子」および,本体下部の「充電/通信ポート」とリセットボタンにそれぞれアクセスするための穴が設けられています。
従って本ケースを装着したままで,iPAQ本体付属の「チャージアダプタ」を利用した充電や,別売りオプションの「IPP USB Auto-Sync (同期)
ケーブル」を利用したデータ同期を行うことが可能です。
# この手のケースの常として,装着したままクレードルを利用することはできません。
本体前面下部の各アプリケーションボタンとナビゲーションボタン(カーソル+アクションボタン)と,本体左サイドのボイスレコーダボタン周りは大きく切り欠かれているので,操作上の問題はほとんどありません。
# 気持ち左右端のアプリケーションボタンとカーソル下が押しづらい程度でしょうか,この辺りは本体側の設置位置自体がかなり端にある以上仕方がないところでしょう。
なお,電源ボタンや光センサ,各種インジケータ,スピーカなどが集中して設置されているiPAQ本体上部の黒いパーツ部はフリップオープン時にカバーが干渉しないようになっていますので,フリップを閉じているとアラームインジケータが確認できない以外は問題なく利用できると思います。
次にベルトクリップに関してですが,本体側のクリップ固定基部(取り付けピン)が非常にコンパクトな作りになっていることは特筆に値します。
先にも述べたとおり本ケースはベルトクリップモデルしか用意されていないのですが,取り付け基部がほとんど邪魔にならないうえ角を落したプラスチック製で,鞄の中で他のものを傷つける危険性も低そうですから,カバー単体であればクリップレスのモデルと同様の感覚で利用することができるので問題ないでしょう。
クリップ側には押し込み式のボタンがついていて,簡単にケースをベルトクリップからスライドさせて分離できるので,クリップをベルト側に残したままケースを素早く外し,用が済んだらまた手早く装着するといった利用が可能となっています。
これは余談になりますが,手持ちのj568用と,今回お借りしたサンプル品のCFジャケット専用&PCジャケット専用,製品版の本体専用とではクリップの形状に微妙な違いがありました。
# 現在では全ての製品に(本体専用に付いていた)最新版が添付されているそうです。
最も古いj568用ではクリップ先端の爪がクリップ本体側に深く食い込んで固定される形状になっていたのですが,これがCFジャケット(とPCジャケット)専用では爪が浅い位置で止まるようにクリップ本体側にストッパーが設けられ,最新の本体専用では爪が本体側に食い込まず,本体外面の爪を固定するための溝と噛み合って固定される形に変更になっています。
推測ですが,当初の形状だとクリップが洗濯バサミ状に噛み合うため,クリップ間の空間が三角形の下すぼまりになってしまい,革製のベルトなどを傷つける恐れがあって後の小改良(ストッパーの付加)が加えられ,最新版では形状の見直しがおこなわれたのではないでしょうか。
# さらに最新版では爪がある側のパーツが延長されており,(てこの原理で)よりクリップを扱いやすくなっていたりもしますし。
こうした細かい改良がおこなわれている点は好感を覚えました。
# って,私自身は布ベルトしか使わないひとなので,j568用についていたものの方がかみ合わせがより強固(な感じ)で気に入っていたのですけれど(^^;
# ただし,最新版の方を使って腰に本体を装着した状態で試しに走ってみましたが,クリップが外れてケースが放り出されるようなことはなかったので,実用上問題ないとは思います。
# 以前他社製品で同様のことをして,クリップのバネの弱さからケースごと本体をダイブさせた経験もあったり(笑)
本ケースはフリップ側にカード(名刺?)を入れるためのスリットが2箇所と,ポケット(一番下,写真参照)がひとつ用意されています。
このポケットは底が深いので,カードなどを入れて奥の方に入ってしまうとなかなか取り出せず急いでいる時などには困ることもあるのですが,私の場合(通常取り出し不要の)JR東日本のICカード『Suica』を入れて利用しています。
液晶保護のための強化板が入っている関係もあってフリップ側にある程度の厚みがあるので,最初試した時は心配でしたが,j568用で試した限りにおいては読み取りに失敗したことはありませんでした。
なお,本体専用のみケース自体の厚みに余裕があるためか,SDメモリカードを入れるためのスリットが2箇所用意してあるのは便利ですね。
# Vajaのものだと,CFジャケット専用ケースなんかでもSD用スリットがあるわけですが(^^;
以上,ざっと本ケースの特徴を紹介してきたわけですが,実用上欠点…とまではいきませんがちょっとした問題が散見される部分もありました。
ひとことでいってしまえば,「日本市場に合わせたローカライズが甘い」ということです。
本ケースにはストラップを付けるための穴や金具が用意されていません。
海外では携帯電話にもストラップを付けることはまれらしいので仕方がないことなのかもしれませんが,日本では付けたいと思うひとも多そうな気がします。
ただ本製品の場合,フリップを裏に回した状態でフリップ固定用のベルトをホックで固定してやることで,上手い具合に手を入れるスペースをつくることができるので,通勤電車の車内などある程度長時間利用する場合の落下防止策として利用できそうです。
# ホックは付け外しが容易にもかかわらず思いの外しっかりと固定されるので,全面的には信用できないものの,落下の保険程度の働きは期待できそうな雰囲気があります。
また,ヘッドフォン端子用の穴が丁度いい位置にありますから,ここにストラップを通してしまうというのもひとつの解決方法でしょう。
私自身j568用にこの方法でストラップを付けて落下防止のアシストとして利用してきましたが,破損した経験はまだないです。
# もっとも,ストラップを持って本体を振り回したり,鞄から引っ張りだすのに使ったりしたらもたないと思いますけどね(^^;
次にこれまた言い古されたことでしょうが,CFスロットやSDスロット(後者は不要かも)部分に穴が空いていないため,ケースを閉じた状態でのカードの抜き差しやPHSカードの挿しっぱなし運用ができません。
CFスロットが1スロットしかないj568のようなマシンであれば,抜き差ししての運用がメインとなりますから,さほど問題にならないのでしょうが,iPAQのように2〜3スロット利用できるようなマシンになってくると不便に感じるひとも多そうです。
もっとも,ケースに大きな開口部を設けるというのは強度の低下や型崩れ,見栄えの悪さの原因にもなりますから,個人的にはこれはこれで正解と思わないでもないのですが。
# CFスロットから飛び出たエクステンション部分を上手く穴に通すことを考慮すると,必要以上に大きな穴を開けないといけない可能性も高そうですしね(^^;
それともう一点。最大の問題があります。
先にも書いた通り,本ケースは(Vajaのものなどに比べると)かなり余裕のある作りが特徴です。
CFジャケット専用ケースなどでは,そのおかげで各種ジャケットを利用できるという長所にもなっているのですが,裏を返せば(微妙な差とはいえ)無駄が多いということに繋がります。
本ケースのこの余裕がある作りというのは実はケース全体の作りにもいえることでして,裏面やフリップ部分にスポンジや補強用の板,品質のいい革素材などをふんだんに使用しているおかげで『かなり分厚い』ケースになってしまっているのは厳しいものがあるのではないでしょうか。
個人の感覚にもよるのでしょうが,予備知識なしにCFジャケット専用ケースをみた場合,PCジャケット専用ケースと錯覚してしまいそうなくらい大柄な印象を受けてしまいます。
もちろん,こうしたマージンの大きさというのは,液晶や本体の保護,質感の良さにも繋がっているので個人的には気に入っている点でもあるわけですが,少なくとも日本人の場合,通常この手のケースにはコンパクトさを求めるひとが大半だと思いますから,この点は大きなマイナスポイントとして映ってしまうのではないかと思うわけです。
# これに関連して,あまりないシチュエーションではありますが,フリップを開けた状態でケースを逆さまにしてすこし揺すってやるだけで『簡単に』iPAQ本体がケースから抜け落ちるというのも問題ありそうです。
と,ここまで述べてきたように,本ケースの場合,純然たる欠点というよりは,好みや考え方の違いで片づけられるようなものばかりですし,ケース自体の作りや質感は価格以上の満足感を味わえるケースだと思います。
本記事を読んで,そして一連の写真をみて「欲しい」と思ったなら迷わず買ってよい製品に仕上がっているのではないでしょうか。
今回記事を書くにあたっては,冒頭に述べた通り本体専用ケースのみ製品版で,残りのCFジャケット専用とPCジャケット専用の各ケースに関しては,先行サンプル品をお借りしています。
この内,PCジャケット専用に関しては問題なかったもののCFジャケット専用ケースについては,リセット穴の位置ズレやフリップ固定用ベルトの寸足らず(かなりきつく引っ張らないと固定できなかった)など,細かい寸法に問題を感じる箇所がありました。
こまもの本舗のK造さんにその旨問い合わせたところ,先行サンプル品ゆえの多少のフィット感のまずさがありますとのこと。
また,製品においても(コンピュータ制御ではない)ミシンによる手作業によるため,若干の個体差もありうるが,実用上問題があったりどうしても納得がいかない作りの場合,交換に応じてくださる(意訳)とのことですので,その点に関しては安心して購入できるという印象を受けたことを(貸し出しいただいたケースに問題があったことを含めて)最後に明記し,本記事の締めくくりとさせていただきます。
# 3ケース同時貸し出し&不躾な質問への快いお返事感謝いたしますm(__)m >K造さん&こまもの本舗さん